『VIVANT』で読み解く自律神経の世界

堺雅人さんが演じる主人公・乃木憂助と、その別人格の「F」。
温厚で人当たりのいい乃木と、荒々しく攻撃的なF。対照的な二つの人格が一人の人間の中で共存し、時に衝突しながらも見事に協力し合っている姿は、観ていて本当に面白いですよね。

観ながらふと気づいたんです。
「これって、私たちの身体を司る自律神経(交感神経・副交感神経)の働きそのものでは?」と。

今回は、ドラマ『VIVANT』を「自律神経」というレンズを通して読み解いてみたいと思います。


■ 副交感神経として読み解く「乃木憂助」

人が好きで、温厚で、任務に忠実。前向きで安心感を与える乃木憂助は、まさに【副交感神経】の象徴です。

一見、兵士としては頼りなく見えますが、別班が行う潜入工作において「相手の警戒心を一瞬で解く」という絶大なメリットがあります。
しかし、いざ絶体絶命の危険が迫ったとき、優しさだけでは乗り切れません。自分や仲間を守るために敵を排除し、非情な選択をする必要がある場面で、彼は「F」へとバトンをタッチします。役割を分担することで、心身の無駄な消耗を防いでいるのです。

ただし、乃木がいつでもスムーズにFと交代できるわけではありません。
交代できずに極限のストレスがかかったとき、彼は「フリーズ」や「ブラックアウト(記憶の遮断)」を起こしてやり過ごします。
実はこれ、副交感神経のリアルな反応と同じなんです。過度なストレスを浴び続けると、副交感神経はリラックスではなく「フリーズ(重度のうつ・無反応状態)」を起こします。

劇中で、桜井指令が仲間を見殺しにする決定を下した際、乃木が「規律、規律、規律の順守……」と呪文のように繰り返しつぶやくシーンがありますよね。
あそこは、仲間を見切るあまりのストレスで脳がブラックアウトしそうになる自分を、なんとか繋ぎ止め、なだめようとしていた瞬間だったのではないでしょうか。(個人的に大好きなシーンです)


■ 交感神経として読み解く「F」

穏やかな乃木に対して、一転して気性が荒く、目的のためには手段を選ばないF。彼はまさに【交感神経】です。

乃木では抱えきれない極限状態を打破するために表へ出てきます。「いつもFが出てくれば強いのに」と思うかもしれませんが、そうはいきません。Fは目的を遂行する代償として、乃木の心身や人間関係を強烈に消耗させるからです。

一見、好戦的に見えますが、Fは単に暴れたいわけではなく「目的遂行と生存」に100%全力を注いでいるだけなのです。
プライベートジェットでシンシーから逃げる際、口先と度胸で圧力をかけて突破した姿は、まさに危機に立ち向かう「Fight or Flight(闘争か逃逃)」の交感神経そのものでした。


■ あなたの中にいる「乃木」と「F」は元気ですか?

『VIVANT』の物語を通して見ると、乃木(副交感神経)とF(交感神経)の役割がすっと整理されてきませんか?

翻って、自分自身に当てはめてみてください。
普段の生活、ご家族と過ごす時間、お仕事の場面、あるいは人生のピンチのとき……あなたの「乃木」と「F」はどのように働いているでしょうか?

Fばかりを前に出して、心身をすり減らしていませんか?
逆にFを出せず、乃木がフリーズして「規律、規律……」と心の中で必死に耐え続けていませんか?

二つの人格のバランスに目を向けてみると、ご自身の身体からのサインに気づく「新しい発見」があるかもしれません。